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【25季第3節】東京ヴェルディ戦(ホーム)

寒かった…(物理的にも心理的にも)。ホームに東京ヴェルディさん(以下ヴェルディさん)を迎えてのJ1第3節、スコアは0-1での敗北ですが、気持ち的には点差以上の差があったと言わざるを得ません。

ラスト20分くらいで怒涛の大反撃が発動したのが見れたことが、かろうじて帰りの気持ちを少しだけ明るくしましたが、やはり帰路につく町田サポさんたちの背中はかなり力なく沈んでいたように見えました。

前節は「それぞれの攻撃がどのように終わったか」をカウントして試合を振り返ったのですが、今節は「どのように選手交代が起きてどのような変化があったのか」を考えていきたいと思います。やっぱり水曜ナイターで現地観戦だと、帰ってきてもう一度DAZNを見る時間的な余裕はなかなかないですね(気持ち的な余裕がないわけじゃないやい…ということにしといてください)。

目次

いまゼルビアに起きていること

今のゼルビアの戦い方は「ある程度勝ちを見込める戦術(=これまでにやってきた戦術)」と「新たな引き出しとしての戦術(=今シーズンから取り組み始めている戦術)」の2つに分けられると思っています。
それぞれのやり方をざっくりまとめると、前者は「ボール保持にこだわらず大きく前に出すロングボールをワントップが収め、そこを起点に攻撃を展開する」、後者は「ボールを保持してじっくり崩していく」という方針といって良いでしょう。

23シーズン、ゼルビアは前者のやり方でJ2優勝、J1昇格を果たし、24シーズンもその流れを汲んでJ1に旋風を巻き起こしました。
じゃぁ前者のやり方でこの先もずっと行けそうかというと、ワントップゴリ押しで引き出しがない状態では相手の対策も進み、そうそう勝ち星を順調に積んでいけるわけではないというのは24シーズンの後半戦あたりにまざまざと見せつけられました。
なら後者のやり方でグイグイ行けるかというと、そこはまだ練度が前者のやり方ほど洗練/整理されているわけではなく、実践経験を積みながら模索している段階という認識です。

というか、仮にめちゃくちゃ練度が上がってきたとしても、後者のやり方一本槍でやっていくのであれば、結局は対策されていくことが想定されるわけなので、いまゼルビアが求めているのは「どっちのやり方でもいける(=引き出しを増やす)ことで、相手の対策に対策する」であって、それが黒田監督就任以来標榜されている「何でも出来るサッカー」をゴールとする道筋なのだと思っています。
その意味で、今ゼルビアがチームとして「新しいやり方を模索する」というのは、極めて真っ当な正常進化であると考えます。

とはいえ、サッカーも興行でありビジネスなので、「新しい戦術を身につけるためなら眼の前の勝利などいらぬ」という孤高の剣豪のような無骨なやり方が取りにくいというのは事実です。特に町田はまだまだ若いチームなので、サポーターやスポンサーのロイヤリティ(忠誠度、と訳されることが多いですが表現として強いですよね…)が不安定であることは否定できません。
特にサポーターについてはここ2シーズンでそのボリュームを数倍にできていますが、その原動力は「勝利のカタルシス」に強く支えられている可能性が高いと考えています。というか、スポーツビジネスとしてはそれはむしろ当然であって、どんなスポーツ、どのチームであっても「勝てば嬉しい」は新規ファンであれ古参ファンであれ揺らぎようのない事実なので、やはり「眼の前の勝利も欲しいよね」は外せないポイントです。サポーターもスポンサーも良い選手も「勝てるチーム」に集まってきます。

…というあたりのバランスを考えると、今季のゼルビアの方向性は「新しい勝ち筋の獲得を目指しつつ、眼の前の勝利も着実に拾っていく(のでリーグの着地点としては5位以上目標)」なんだと思うのですが、そりゃ口で言うのは簡単、そんなに簡単にいいとこ取りはいかないよね、というところで、じゃぁその方向性の実現に向けてどう舵を切っていくかが課題になるわけです。

幸いなことに、今季はACLに向けて「2チーム分の戦力を」という方針に沿って、有力な選手、かつ、複数ポジションこなせる選手を多く保有できています。そうすると、上記の舵取りの方向性は「試合の中でやり方を変える(ことも視野にいれる)」なのではないかと思っています。

布陣の推移と試合の流れ

…ということで、試合の中でどう「やり方を変えていったか」を見ていきます。

開始時の布陣

開始時フォーメーション

試合開始時のフォーメーションはこんな感じの布陣でした。前節まではオセフンだったワントップをデュークに変えましたが、基本的には従来のやり方をベースにした感じでしょうか。
ただ、望月のところが狙われていたというか、本人的にも前に行くのか守るのかの判断のところがちょっと不安定だった印象。あまりいい動きが出来ていなかったので後半で交代かな、と思ってみていました。
前線のデュークへの収まりも今ひとつでしたし、何より今節は全体的に「寄せに行ったところを躱されてそのまま前進される」というシーンが多かったように思います。セカンドボールの回収率も低かった印象です。

以前のヴェルディさんとの対戦でも(他には新潟さんとか)、「寄せたところを躱される」は結構あったように記憶していて、これをやられるとキツイんだよなぁという印象を持っています。これ難しいですよねぇ。寄せないわけにもいかないし、寄せに行ったら抜かれるし。何が最適解になるんだろう。

後半に入るときの布陣

後半に入ったところで、デュークを下げてナサンホIN。望月は残して前線を入れ替え。ナサンホが右に入り、西村が中央へ。これは身長で優位に立てるメンツを前線に置かないというかなりチャレンジングな交代のように思いました。
たまに相馬が中央で高いボールを競るようなことも何度かあり、そりゃ無茶だろ…と思って観ていました。逆に言うと、前線の変更に対して中盤~守備の配球がそれに追随していなかったような印象でもあります。
あと、前節で西村がCFでいい仕事をしたからというのもあるのかもですが、キャンプでもやったことのないポジションと言っていたのに二節続けてそのポジションに入れた、というのが再現性という意味では気になるところではあります。

この布陣は結局20分くらい続きましたが、効果的に機能していたとはいい難い感じでした。

65分の交代での布陣

65分の2度目の交代でこんな感じに。白崎に代えて下田、西村に代えてオセフンがIN。下田が縦に差し込むパスを入れてくれるようになって、だいぶ前線が活性化してきました。改めて前線で競れるタイプを入れて、従来のやり方での攻略に舵を切った感じでした。
オセフン、今日めっちゃ良かったです。主審が海外の方ということもあって相性が良かったことや、ヴェルディさんの守備陣の高さがそれほど圧倒的でなかったこともあるかもしれないけど、前線でよく競って良いところにボールを流せていました。

この交代、ちょっと不思議だったのが、何でこのタイミングで前線をもう一度「身長が高くて競れるタイプ」に戻したのかというところ。ハーフタイムでの交代はまさにそのタイプだったデュークを下げて、より「新しいチャレンジ」っぽい布陣に変更したところだったので「一周回って元に戻った」ような印象を受けました。

最後の交代での布陣

さらに76分に最後の交代。望月に代えて藤尾、イボに代えて藤尾がIN。前線がオセフンと藤尾のツートップ。林は、中山の位置に入り中山がCBの左に、昌子がCBの右に入りましたが、割とすぐに林と相馬が位置を入れ替えて最終的にはこんな形になりました。林と相馬はかなり位置も高く取って攻撃参加し、前線5枚のパワープレイの様相を呈していました。
パワープレイがかなり功を奏していて押し込めていたのですが、仮にこのフォーメーションで試合がスタートしていたとして同じような圧力をかけられたかはなんとも言えないところで、相手の体力も失われつつあるこの時間帯だからこそ効いた、という部分もあるように感じました。とはいえ、オセフンも継続してかなり競り勝てていて「従来の形」での攻略がやはり一定以上の効果があるな、ということを実感しました。

余談ですが上記の形になった後半91分すぎくらいのところで、高いボールをオセフンが競り、ラインを割ったところで線審のジャッジはヴェルディボールとなったシーン。一瞬、オセフンは抗議っぽい表情を見せるのですが、その直後、天を仰いで胸のエンブレムを力強く何度も叩いてその不満を飲み込んでいたように見えます。前節、前々節とジャッジに苦しんだところからプレーのリズムを崩してしまったことへの反省を踏まえて自分のすべきこと、ポジションを任されていることに対するを意識した行動のように感じられ、グッと来ました。オセフン自身色々と模索している最中だと思いますが報われてほしいなと強く思います。

終盤、かなり押し込んでいて得点しそうな雰囲気ではあったのですが、相手GKマテウス選手の好セーブ連発もあり、残念ながら得点は奪えずこのまま0-1で試合終了しました。

新たなやり方を模索するのであれば…

結果的には、従来のやり方で試合に入り、後半に入ったところで新しいやり方での打開を図り、終盤でもう一度従来のやり方に戻したうえで最後にパワープレイ、という流れだったという理解です。

繰り返しになりますが、現状「練度が高く得点可能性が高そうな従来のやり方(ただし対策される可能性も高い)」と「将来への布石にもなり対策される可能性も低い新しいやり方(ただし練度はそこまで高くない)」の間でどうバランスを取っていくかということが課題になっていると思っています。

…であれば。であればこそ。

「従来のやり方」を選択するときには、「必殺」である必要があると考えています。
文字通り「このやり方であれば必ず得点する」と言えるだけの鋭さがあれば、「新しいやり方で0-0で推移させ、終盤に従来のやり方で得点する」だったり「従来のやり方で早い時間帯に複数得点し、終盤で新しいやり方を試す」だったりも現実味を帯びてきます。

今節でいうと従来のやり方に近い布陣で臨んだわけなので、前半でリードすべき、悪くとも0-0で折り返すことが望ましい展開だったはずですが、結果としてはその前半で失点し、「新しいやり方」での反撃に失敗し、さらに最終盤に「従来のやり方」に戻して追いつききれなかったのは、少なくとも試合展開という点では最悪に近かったように思います。

個人的には試合の入りのところで、布陣は従来のやり方に近かった割に、ボールを保持しての打開を図るようなシーンも多く、歯車が噛み合わないような印象を強く持ちました。前線にデュークを置いているのであれば、その時間帯には素直にデュークを使った攻略にしたほうが良かったのかもしれません。
そのあたりのギクシャクした感じが、望月の「前に行くに行けない、後ろに下がるに下がれない」という状況を作ってしまい、そこを突かれたようにも思います。

今の時点で、「新しいやり方」が得点に結びつかないのは、正直あまり問題だと思っていないというのが正直なところです。おそらく黒田監督の中では、ACLがスケジュールに組み込まれてくるあたりまでには一定レベルには到達させたいという感じなのではないかと思っています。実際問題としてACLを戦いながら何かを「試す」というのはかなり難しいと思うので、色々模索できる期間はそんなに長いわけではないでしょう。

その「模索」の時期に勝点を失わないためにも、さらに言えば安心して「模索」出来るようになるためにも、従来のやり方の切れ味はこれまで以上に鋭くしておく必要があるのではないかなと思っています。

僕は、ゼルビアは新しいチャレンジをしていくべきだと強く信じています。長くJ1で戦い続けるためには引き出しを増やすことは絶対に必要です。なので、ここで焦ってチャレンジを引っ込めるのは得策でないと思っています。サポーター心理としてはもちろん毎節勝って欲しいくらいなので目先の勝ち星も拾ってほしいですが、そこに重きを置きすぎて新しいチャレンジに消極的になってほしくないと願っています。積極的に新しいチャレンジをしていけるように、その後ろ盾になれる「従来のやり方」を磨き、その結果として「新しいやり方」の練度を上げていくような、逞しさと老獪さを今季たくさん見れると良いなと思っています。

次節はアウェイ名古屋戦。連戦になりますが、うまく切り替えて良い試合(選手にとって学びの多い試合)になることを祈っています。

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